FAZER LOGIN「へぇ、答えてくれないという事は、そうなんだろうね。いっその事、えぐっちゃおうか?」「くっ!?」「それとも俺が噛み取ってやろうか? どっちがいい?」 アキさんの顎を掴んで正面に向けさせると、ふわりとした笑みを浮かべた。その嬉しそうな表情に、胸の奥がきゅっとしなる。「竜馬くんの好きにしていいよ。俺は構わないから」「何、強がり言って――」「竜馬くんが何らかの手を使ってそこに傷を作っても、大きくなればなる程、穂高さんの付けた痕が大きくなるんだから」 その言葉に、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。もしかして今から俺がやろうとしていることは、同じことなんじゃないだろうかと思わされてしまった。 アキさんを抱いてしまったら、アキさんの中にある井上さんが今まで以上に光り輝いて、大きくなるのかもしれない――その証拠にこんな状況だというのに、さっきから落ち着き払っている様子も、何だかおかしい。「何で、そんなっ平然と――」(乱してやる……。そして穢してやろう。心の中の井上さんが大きくなる前に、俺に溺れさせちゃえばいい!!) 両手で顔を押さえ込み、何かを言いかけた口を強引に塞いでやった。無抵抗でいるアキさんの舌を、ぐちゅぐちゅを吸い上げてみる。「ぅうっ!? やぁっ…あっ」 嫌がったのか感じたのかは分からなかったけど、反応してくれたことにほっと胸を撫で下ろした。もっと感じさせようと、両手を使って身体のあちこちに触れてやった。「んっ、ぅ、っ……」「吸いつきたくなるような、白い肌をしているね」 首筋をなぞるように舌を這わせて、アキさんをじっくりと堪能してみる。縛り上げられていても、もっと抵抗するだろうなって俺の中では思っていたのに、まるで進んで身体を提供してくれる姿に、どんどん責めたくなってしまった。 キレイな色をした乳首にねっとりと舌を這わせてやると、ピクピクッと身体を震わせた。「へえ、男でも感じると乳首って勃つんだ。アキさん、気持ちいい?」 感じさせるべく執拗に舌先で転がしつつ、反対の手で残っている部分を摘んで可愛がってあげる。「はぁはぁ……っ、あ、ンっ」「恥ずかしがることはないよ、こんなになってるんだし。もっと声を出して」 そう告げた途端にぎゅっと目をつぶり、顔を背けて唇を噛み締めた。「それって井上さんに、操を立ててる感じなのかな。彼以外
つま先を使って抜き足差し足で忍び寄り、台所に立ってる細身の身体にぎゅっと抱きついてあげた。「なっ!?」「待っていられなくて、勝手に上がらせてもらっちゃった。お水、ありがとアキさん」 肩に顎を乗せてお礼を言うと、くちびるが見る間にぶるぶると震えだす。今直ぐにでも塞いで、その震えを止めてあげたいな。「はっ、放して、よ……。お願ぃ、だから」「そんな風に震えながら掠れた声をあげてくれるなんて、まるで感じてるみたいに聞こえるね」「ちがっ……。そんなんじゃ、な――っ!?」 ふふっと笑いながら、傍にあるふっくらした耳たぶを口に含んだ。柔らかくてしっとりしているそれに、どうにかなってしまいそうだ。 荒い呼吸を繰り返す身体を手早く反転させて向かい合う形にしたら、悲しげな色を宿した瞳が俺の顔を捉える。見つめられるだけで、体温が一気に上がってしまうよ。「もう誰にも邪魔されない。俺だけのモノにしてあげるアキさん」「それは……きっと無駄だよ。そんなことをしても、俺の心は手に入らない。むしろ君を、どんどん嫌いになるだけなのに」 静まり返る家の中にアキさんの声が響いた。自分のすぐ傍で告げられた言葉だったけど、ほぼ泣き声に近くて所々聞き取りにくかった。だからこそ、しっかりと耳を傾けたんだ。心と一緒に――。「嫌いなんていう、生ぬるい感情は嫌だな。むしろ憎んでくれて構わないよ」「えっ!?」「だってその方がアキさんの心の中に、深く深く残るでしょう? 真っ黒い影になって、井上さんという光を覆い隠す存在になるんだ」 漆黒の影になって心の中で光り輝いているであろう井上さんを飲み込み、忘れられない存在になってやる。「……可哀想な、ひと……」 切なげな表情をしながら、じぃっと俺を見つめたアキさんに、一瞬だけ息を飲んでしまった。(何で……なんだ――どうして!?)「こんなときまで、変な優しさをかけないでよ。自分が今、どんな状況なのか分かっているよね?」 動揺を悟られないように彼の腕を掴み、力任せに引っ張ってその場に押し倒してやる。どこか打ったのか、痛そうな顔を見て躊躇ってしまった。 ゴメンって、声をかけようかと思ったけれど――さっきのアキさんのように変な優しさをかけると隙を与えてしまう恐れがあると考えて、すかさずその身体に跨った。「その泣き顔を悦びに変えてあげる。いっぱ
生暖かい風が吹く中、コンビニの外で350mlの缶ビールを開けた。ちょうど3本目を飲み終える頃にアキさんが外に出てきて、俺の姿を見た瞬間にぎょっとした表情を浮かべる。 ただ待っていただけじゃなく、飲んでいるという事実に面食らったであろう。「お疲れ様ぁ、アキさん。待ってるのが寒くって、こんなところで宴会しちゃった」 大きな声で話しかけたのにそれを無視して、脱兎のごとく駆け出した彼を追いかけるべく、転がしていた空き缶を手早く拾い集め、外にあるゴミ箱に捨てて、その背中を追いかけた。「うわー、飲んでるから追いかけるの、結構つら~……」 追いかけるアキさんの背中が、右に左によく揺れる。って俺が揺れてるから、そうなるのか。ちょっと飲みすぎちゃったな―― 若干の気持ち悪さを抱えながら、走ること数分。そうこうしている内に、もうすぐアパートに到着してしまう場所に差し掛かった。(――仕掛けるなら、今だろう……) 目をぎゅっと瞑り、思いきって転んでやった。ズシャッ! なぁんていう、大きな音までオマケでつくとかラッキー。「いったぁ……」 あまり痛くはなかったけど、転んだことを大げさにすべく大きな声で言い放つ。否が応でも、アキさんの耳に届いただろうな。 顔を歪ませて必死に笑いを堪えていると、アキさんが渋々といった感じでやって来て、俺に向かって手を差し出してきた。「大丈夫?」 まんまと騙されてくれたことに思わず笑い出しそうになり、慌てて顔を背ける。口元を押さえて、何とか微笑を隠した。「……あまりにも惨めな姿に、仕方なく手を貸してくれる気になったの?」 笑いを堪えているので、必然的に声色が震える。それが迫真の演技になって、彼に伝わったかもな。泣いていると思ったかもしれない。「そんなこと……ないよ。だって友達だし。俺たち……」 アキさんはどんな顔して、それを言ったんだろう。優しいくせに残酷な人だ――だけど俺は愛おしくて堪らない。「っ……なんで……なんで友達以上になれないんだよっ!!」 もしも願いが叶うなら井上さんよりも先に、アキさんに出逢いたかった。先に出逢っていたら、もしかしたら俺に恋していたかもしれないよな。「竜馬くん、お酒あんまり強くないのに、飲み過ぎたみたいだね」「何度となく告白してもスルーしたアキさんから、そんな風に優しい言葉をかけられるなんて
*** あの後――『押し付けられる想いは、迷惑にしかならないよ。それに今みたいに抱きついたり嫌なことをするようなら、俺にも考えがあるから』 というアキさんの考えを読み、バイトをしている店の外で待ち伏せをしてみたり、その帰りをただ背後をついて歩いたり、他にもアパート前で待ち伏せして、姿を現すだけにしてみた。 バイトを終えて疲れて帰ってくる彼のストレスを考慮したら、張り詰めるような緊張感が続くのは、せいぜい1週間から10日くらいだろうと予想を立てた。まあどんなに長くても、俺のこの想いは簡単に消えるものではないけれど。 そんな自分で予想したアキさんの精神力がどれくらい持つか、先が見えないものだからこそ楽しみもあって、怯える彼の背中を窺いつつ、必死になって隙を探した。 しかしながら当然というか思っている以上に彼のガードが固く、そういうところがアキさんらしいなと毎回微笑んでしまう俺は、相当逝かれてると思う。 だけどそれも、今夜で終わりにしてあげるね――。この手を使って、アキさんを俺のものにしてあげる。どんなに逃げても追いかけて、ぎゅっと抱きしめてあげるから、楽しみにしていてほしいな。「アキさん、大好きだよ……」 彼に恋人がいても気にしない。絶対に俺のものにしてしてみせる! たとえそれがアキさんに嫌われる行為になったとしても――。「俺の想いをアキさんに伝えるために、やらなきゃダメなんだ!」
*** 出口のない迷路を、当てもなく彷徨っているような感覚――アキさんを追いかけたところで困らせてしまうことが分かっているのに、追いかけずにはいられない。心の中で燻っている、蒼い色をした残り火がある限り……。 コンビニの影に身を潜め、壁に寄りかかりながらアキさんが出てくるのを待っていた。 ここに到着したときに見た店内で働く様子は、笑顔を絶やすことのない楽しげな感じで、自分と一緒にいるときとの違いに、正直ショックを受けてしまった。出待ちを躊躇うくらいショックだったのにそれを押し留めたのは、胸の中でちりちりと燃えている蒼い炎だった。「……井上さんに負けたくない。俺だって、アキさんが好きなんだから」 拳を握りしめて空を仰ぎ見た瞬間、従業員出入り口の扉の開く音が耳に届く。物陰からそっと窺ってみたら、外の寒さに身を縮込ませながらも、柔らかい笑みを口元に浮かべるアキさんがそこにいた。(君を振り向かせるために、俺はここに来たんだよ――)「お疲れ様、アキさん」 大きな声で言い放ちながらコンビニの影から突然出てみると、一瞬で表情が変わった。大きな瞳をさらに大きくして、俺をじっと見つめる。 アキさんに見られている――そう感じるだけで、胸がいっぱいになるな。「な、んで?」「何でって、それは俺が言いたいよ。いきなりシフトを変えちゃうんだもんな。大学だって逢うのは稀なのに、ここでも逢えないとなったら、アキさんの帰りを狙うしかないじゃないか」 井上さんから君を奪うには、少しでもいいから接触しなければならない。俺の存在をその身に感じて、たくさん意識してもらわねばならないからね。「ハハッ、すっごく驚いた顔してる。大丈夫、安心して。夜道で襲ったりしないから」 とりあえず、何もしないことをアピールしてみた。「と、当然だよ、そんなの……」 顔を引きつらせつつじりじりと俺との距離をとってから、逃げるような足取りで歩き出すアキさんの横に並ぶように、同じように早足で歩いてやる。「俺ね、アキさんが大学構内の階段下で電話してるの、こっそり聞いちゃったんだ」「!!」 微妙すぎる表情を浮かべていたからこそ、思いきって大学構内の話を投げかけてみた。「『愛してる、穂高さん』って言ってるのを聞いて、すっごく妬けた。井上さんが羨ましくなった。だけどね……」 俺の言葉に恐るおそるとい
*** 次の日の夜のバイトの時間。アキさんと逢える貴重な時間に、心がウキウキしていた。ゆっきーの顔を見るまでは――。「竜馬、お疲れー」 先に店舗に入っていた俺に、ダルそうな感じで挨拶してきた。「お疲れ、さま……。何でゆっきーがシフトに入ってんの? アキさん病欠?」 カウンターにあるレジの前でぴきんと固まる俺に、はーっと深いため息をついて、眉根を寄せながらじっと見つめるゆっきー。「何でって、思い当たるフシがあるでしょ。あまりにも可哀想だから、俺とシフトをチェンジしたんだよ」「そんな……」 アキさんに逢える貴重な時間が、これでなくなってしまったじゃないか!「いい加減に諦めなよ。ホントのところは、応援したいんだよ俺だって。千秋に好きな人がいなければの話だけどさ」 言いながら、どんっと体をぶつけて苛立ちを表す。「だけどライバルがあのカッコよすぎるイケメンじゃあ、絶対に無理だって。千秋もぞっこんって感じでしょ?」「うん、そうだけど」「竜馬だって、そこそこのイケメンなんだしさ。千秋を諦めて、もっと周りを見てごらんよ。いい人がきっといるって」 分かるような分からない説得をするゆっきーに、首を縦に振ることが出来なかった。「そんなの無理だよ。だってアキさんが好きなんだ、すっごく」「竜馬……」「どうやってこの気持ちを断ち切ればいいか、全然分からないんだよ。その方法を教えて、ゆっきー。辛くて堪らない……」 アキさんに逢える唯一の貴重な時間が絶たれて、このときはマイナス思考が心の中をぐるぐる支配していたけれど、あとから冷静に考えたときに思いついたんだ。アキさんのシフトの日を狙って、帰りを待ち伏せすることに――。
*** うんざりするような夕食を終え、さっさと風呂に入り自室に篭っていたら、扉をノックする音が響いた。義理の母親が俺の部屋に来ることはなかったので、相手は親父か穂高だろう。「誰?」「義兄さん、俺……」 その声に渋々扉を開けてやると、俺よりも一回り以上大きな体を縮込ませながら、いきなり頭を下げてくる。「……何の真似だよ、これは」「無理矢理連れ帰ったのに、嫌な顔一つしないで夕飯食べてくれてありがとう、義兄さん」 親父がいる手前上、変な態度をするワケにもいかないし、自分のために作られたご馳走に罪はない。ポーズだったがニコニコしながら、それらを口にし、義理の母親にはお礼を言ってやった。
それから暫くして長かった髪を切り、顔のキズを整形手術でキレイにした。逢う人逢う人それぞれが俺を見るたびに、驚愕の表情を浮かべるので見ているのは面白かった。 今、目の前で驚いている紺野 千秋を含めて――『す、すみませんっ、あの……誰か分からなかったものですから』 明るくなったという人もいれば、若く見えると言った人もいたっけ。誰か分からなかったというのは、初めてだけど。 そんな彼の言葉に笑いながら、肩をすくめて訊ねてみた。「こんな時間帯で悪いんだけど、君と話がしたいと思ってね。コンビニの仕事は何時上がり?」 穂高のことで彼をキズつけた俺なのに、それでもイヤな顔ひとつせず、対応してく
「んもぅ、昇ちゃんのイジワル! 大変だったんだからね」「だから最初に言ってたじゃないか。苛められないようにって」「弟さん、玄人じゃないの。全然新人じゃなかったわよ」 約束どおり一番高いボトルで待ち構えていたので、喜んで呑んでやる。「だけど、目の保養にはなったでしょ。自慢の義弟なんだ」「昇ちゃんのキレイな顔にキズをつけたっていうのに、自慢するなんて変」 寄り添うように体を寄せ、右手でキズのついた頬を優しく撫でてくれた。「俺に、刃向かってくるヤツがいないからね。可愛くてしょうがないんだよ」「血の繋がりが全然ないのに、不思議と兄弟揃って似てるトコあるのよねぇ。遠慮せずに、苛めてくだ
穂高と出逢ったのは、俺が中学生の時。 母が死んでまだ3ヶ月しか経っていなかったのに、愛人である穂高の母を家に入れた父が、どうしても許せなかった。『今日から穂高は、お前の弟だよ。仲良くしなさい』 そう言われても納得なんて出来るわけがなく、話しかけられても無視してやったんだ。それでもアイツは俺と仲良くしようと、必死になって接触してきて、すっげぇウザかった。 *** 季節はずれの転校生だった穂高は、学校で目立っていた。染めてるワケじゃなく天然の栗色の髪の毛に、彫りの深い甘いマスクは、女子にモテモテだった。 突然沸いて出てきたイケメンな弟に、同じクラスの女子がこぞってやって来て、仲を取







